椎間板ヘルニア|手術の種類・一覧とメリット・デメリット

誰でもなりえる椎間板ヘルニア

人類が進化して、二足歩行になったために起こると言われている腰の痛み。現在その症状が出ていなくとも、あなたも椎間板ヘルニアの予備軍かもしれません。
ある医学調査報告によりますと、過去に腰の痛みを感じたことのない人をMRI検査でみたところ、60歳以下で痛みを自覚したことがない5人に1人の割合でヘルニアが認められ、半数の人が椎間板の変形や膨らみが見受けられました。さらに60歳以上では3人に1人以上よりも多い割合で椎間板ヘルニアの症状があり、80%程の人に椎間板の変形や膨らみがあったとされています。

つまり、現在痛みを伴う腰痛の症状がなくとも、椎間板ヘルニアを持つ人がかなりの数で潜在的にいる事と思われます。

椎間板ヘルニアとは

椎間板ヘルニアは背骨の椎体と椎体に挟まれた椎間板が加齢による変性と様々な外力が加わることにより、椎間板の断裂、突出、脱出が起こり、靭帯や神経根、脊髄を圧迫し、その結果、痛みや手足の麻痺を起す疾患のことです。重量物を不用意に持ち上げようとしたり、体を捻るなど、無理な動作が発症の原因となることが多くの人に知られています。

椎間板ヘルニアは頸部、胸部、腰部で発症するが、中でも最も多く発症するのは腰部です。特に第4腰椎と第5腰椎の間、第5腰椎と第1仙椎間で起こる例が多く見られます。椎間板は髄核とその周りを包む線維輪からなるが、椎間板の膨隆、断裂、突出が起こることで、その線維輪から脱出した髄核が脊髄神経根を圧迫し、激しい痛みが生じます。

 

椎間板ヘルニアの症状

椎間板の突出、脱出の方向は左右、前後、上下と様々だが、力学的に後方側へ向くことが多く、後縦靭帯や線維輪の外層が圧されると腰痛や頸部痛を生じ、神経根が圧迫されると坐骨神経痛や手足の麻痺が生じます。

明らかな外傷などの原因があって発症する症例が多いですが、原因もはっきりせずに突然に腰痛や頸部痛が生じることも多いです。また、徐々に進行し、いつの間にか痛くなっていた症例もあり、前かがみがしづらくなり、立ち上がる時や咳やくしゃみをすることによっても、痛みは増強します。坐骨神経痛や上肢痛がみられ、下肢を伸ばしたまま持ち上げていくと神経も伸ばされるので、さらに痛みが増強することがあります。手足の指の筋力低下や感覚の鈍麻が生じることもあります。

椎間板ヘルニアの治療

椎間板ヘルニアの治療法はいくつかありますが、その症状の程度により適応が変わります。

経皮的レーザー椎間板髄核減圧術(PLDD)

局所麻酔での施術。背中から患部の椎間板ヘルニアの部分に針を刺し、刺した針の経路にレーザーファイバーを通し、椎間板の中にある髄核をレーザーで焼くことで髄核に空洞ができ椎間板が収縮。
効果として神経の圧迫を軽減、痛みや痺れが改善される。
ヘルニアだけでなく、非特定的腰痛に対しても効果がある。

メリット

外科手術のMED法やLOVE法より、患者様への身体の負担が少ない。
局所麻酔にて施術時間も15分程度なので、日帰りで治療が受けられます。
(地域によっては入院が必要の病院もございますので一度病院またはクリニックでご確認ください)

デメリット

すべての症例の椎間板ヘルニアに適応ではないこと。
手術の費用が健康保険適応外。

経皮的オゾン椎間板減圧術(PODD)

通常の保存治療では効果がなく、外科手術までを必要としない軽度のヘルニアに適応。
局所麻酔にて背中より患部の椎間板ヘルニアへ針を刺し、刺した針の先端よりオゾンと酸素の混合ガスを注入。
効果としてオゾン酸化により椎間板ヘルニアの容量が縮小し、神経への圧迫が軽減されます。
患部の消炎効果があるため、レーザー治療(PLDD)が適応されない患者様でも治療を受けることが可能な場合がある。

メリット

手術の時間が短く、(1箇所:約10分)手術の創も小さい。
術後3時間程で帰宅が可能。副作用や合併症のリスクが少ない。
PLDD(椎間板ヘルニアレーザー手術)より、さらに低侵襲な手術でレーザーの熱で稀に起こる椎間板炎などのリスクもありません。

デメリット

全てのヘルニアに対して有効ではない。疼痛の緩和が弱い(結果によっては複数回施術が必要な場合がある)。また健康保険が適応されない。

ハイブリッドレーザー治療

ヘルニアの痛みの原因には下記の2種類があります。

神経に対する圧力がかかっている

神経に対する圧力がかかっている場合には、手術療法を中心に治療を行います。手術療法とは、病気や症状の原因を手術などで取り除くことにより病気を治す治療法です。しかし、急性腰痛の場合は自然治癒により治る可能性が高いので、3ヶ月程度様子をみることが重要です。慢性的な椎間板ヘルニアや一度手術をすれば、靱帯や髄核が癒着して神経を圧迫するケースもあります。

炎症を起こしている

炎症を起こしている場合には、保存療法を中心に治療を行います。保存療法とは症状を一旦和らげてやることを主目的とする治療法です。例えば、椎間板ヘルニアであっても神経が炎症を起こしていなければ症状が出ない場合があります。手術療法と保存療法の両方が必要な場合もあります。

PLDDとオゾンのハイブリッド手術では、髄核が飛び出して圧力がかかっている根本的な原因を取り除き、炎症を起こしている部分をオゾンにより直接的に抑えるという効果があります。
メリット:手術時間はPLDDやPODDとほぼ同じで約20分~25分。
原因療法(手術療法)と対症療法(保存療法)が同時に行えるので、PLDDやPODDよりも効果がある。

メリット

PLDDにより飛び出している髄核を収縮させ、オゾンにより神経根炎を抑えるという治療です。

セルゲル法(椎間板修復インプラントゲル治療術)

PLDD法(経皮的レーザー椎間板減圧術)やPODD法(経皮的オゾン椎間板減圧術)と同様に、近年研究・開発されてきた先進治療方法の一つであり、エビデンスがしっかりしている治療法では最も新しい治療法である。
最も特徴的なのは、従来の外科手術やPLDD法やPODD法では根本原因である椎間板の修復や再生は不可能であったが、セルゲル法では椎間板の代わりとなるインプラント化するゲルを直接椎間板に注射することで、それが椎間板の変形したり損傷している部位に入り込み固定化し修復されることである。また、椎間板が修復されることで椎間板自体が自身の再生能力によって元の正常な機能を回復するとされている。

椎間板ヘルニアの根本原因である椎間板の損傷を唯一修復・再生する治療が行えるセルゲル法が、様々な観点から考えても優先的に選択されてゆくと思われる

メリット

・他の治療法では不可能であった「椎間板の修復・再生」が可能なため、根治的治療になりえる
・椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、すべり症、椎間関節症、仙腸関節障害など幅広い疾患に対して適用できる
・外科手術後に痛みが取れなかった方や、再発してしまった場合でも治療を受けることができる
・80歳以上の高齢者でも治療を受けることができる
・局所麻酔であること、また細い針だけで治療するため身体への負担が少なく日帰りで治療が可能

デメリット

・椎間板が潰れてほとんどなくなってしまっているような場合は適用とならない
・先進医療かつ自由診療のため治療費が高額である


提供医療機関
日本ではILC国際腰痛クリニック東京で提供されている
https://ilclinic.or.jp/

経皮的内視鏡ヘルニア摘出術(PELD法)

椎間板ヘルニアのサイズが中から大とされ疼痛もかなり強いと感じられる場合の治療法として、経皮的内視鏡ヘルニア摘出術(PELD)があります。
局所麻酔での手術であり、背中から操作管と呼ばれる管を挿入、その管から内視鏡を通してヘルニア部分を確認。小鉗子を用いてヘルニア塊を摘出します。

メリット

手術の創が大変小さく目立たない(6~7mm程度)
切開部分が小さく、術後の痛みが小さい。合併症が小さい。
健康保険での治療が可能(病院によっては自費扱いの病院もあります)。

デメリット

椎間腔が狭い場合や脊柱管狭窄症、すべり症を合併している場合は治療を受けることが難しい。

脊椎刺激療法(SCS法)

鎮痛剤を服用、他の腰の手術を受けても痛みが慢性的(慢性難治性疼痛)になっている方に効果があるとされます。
治療のしくみとしては痛みの信号が神経を経て脊椎に伝わり、脳へと伝達され痛みを感じます。
そこで痛みを伝える脊椎に電気刺激を与えて、脳への痛みの信号を伝わりにくくすれば、痛みが緩和されるとされます。
したがって、脊椎刺激療法は痛みの原因を取り除くのではなく、痛を和らげるための治療法で85%の人に効果があります。
電気刺激の感じ方は個人差がありますが、トントンとマッサージのような感じです。
手術は局所麻酔にて試験的(トライアル)に電気刺激を与えて効果を検討します。
望ましい効果が出ましたら、次の手術で刺激装置を植込みます。
トライアル時にはリードと呼ばれる刺激電極のみを硬膜外腔という脊髄を保護している膜の外側部分に挿入し、その後効果が確認され、患者様の使用したい意思があれば機器一式を植込む手術(本植込み)となります。
本植込み、及びトライアルともに局所麻酔です。
本植込みの手術時間は1~2時間程度で、入院期間は合わせて1週間程度となります。

入院時の流れ

1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目
トライアル
埋め込み
効果を確認 本植え込み 安静 退院

退院後、リードと刺激装置が安定してきたら、体外式神経刺激装置を患者様自身でコントロールすることができます。また、1年に1回外来受診が必要で、装置の寿命は約10年です。装置の交換は1泊2日です。

メリット

慢性難治性疼痛を緩和できる。
局所麻酔での低侵襲度の手術のため、体に負担が少ない。
健康保険の適応手術となり、費用については治療を受けられる病院にご相談ください。

デメリット

疼痛の緩和が目的であり、疼痛の根治的治療ではない。

内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(MED法)

椎間板ヘルニアでも中~重度に適応される術法。全身麻酔にてうつ伏せとなり、背部を16mm程切開し、外筒管と内視鏡を挿入して、内視鏡にて突出したヘルニア部分を確認して切除します。

メリット

外科手術としては約1時間程で比較的に短い手術時間で筋肉の剥離も少なくてすみ、術後の痛みも小さく呼吸器の合併症なども少ない。健康保険の適応にもなります。

デメリット

LOVE法よりは低侵襲ですが手術の跡は16mmとやや大きくなり、入院期間も1~2週間程かかります。
手術の技術も熟練を要しますので、専門的な病院でないと手術を受けることができない。

顕微鏡下椎間板ヘルニア摘出術(MD法)

適応としては、中~重度とされ、全身麻酔を用いる外科手術。3cm~5cm程切開し、顕微鏡に突出したヘルニア部分を切除する方法。

メリット

中心型、後外側他。色々なタイプのヘルニアに対応しやすく、他のすべり症や脊柱間狭窄症などの合併症にも対応が可能であり、健康保険が適応される。

デメリット

LOVE法よりは低侵襲であるが、MED法よりも切開が大きく、退院まで2~3週間と時間がかかる。

LOVE法

ヘルニアの手術として、過去から一般的に行われてきた手術法です。
全身麻酔の外科手術で背中を5cm~10cm程切開し、目視下にて神経を避け、靭帯や椎弓などの一部を削るまたは切り開き奥側にあるヘルニア部分を切除する外科手術です。

メリット

中~重度の椎間板ヘルニアに対応できる。目視下の手術にて病変の見落としが少ない。健康保険が適応される。

デメリット

切開の範囲が広がるため、体の負担が大きく手術後に安静期間とリハビリ期間も必要となりますので、入院期間が2~3週間と長くなります。

間違えられやすい他の病気

脊柱管狭窄症
脊椎分離症 / すべり症