脳動静脈瘤奇形

脳動静脈奇形とは

脳動静脈奇形とは脳血管が形成される妊娠初期の胎児の異常により、毛細血管が作られずに動脈と静脈が直接つながってしまった先天性の病気です(遺伝する病気ではないと言われてます)。
毛細血管が無いため、本来は血管が細かく広がって分散される動脈血液が高い圧力のまま直接静脈に流れ込み、非常に速い血流が異常な血管の塊(ナイダス)を少しずつ大きくする事があります。
通常の脳血管とは異なり、動脈の強い圧力が直接または異常な弱い血管に加わるため、血管の弱い部分が切れて出血し、くも膜下出血となったり、脳内出血を起こすことがあります。
また、毛細血管を通過しない血液は脳との間で酸素や栄養、老廃物や二酸化炭素の交換ができないため、脳が正常に働けなくなり、その影響として、てんかんや発作・認知症状が見つかることがあります。

脳動静脈瘤奇形の症状

約40~80%は脳動静脈奇形が破裂して、くも膜下出血あるいは脳出血の症状を起こします。
脳動静脈奇形の出血は小さい脳動静脈奇形の方が出血しやすいと言われており、動脈からではなく静脈性出血である場合が多く、動脈瘤の破裂に比べると程度は軽いと考えられますが、出血量によっては死亡する例も少なくありません。
脳動静脈奇形が破裂する頻度は毎年人口10万人あたり1人で、 20~40%は痙攣発作で発症します。
体の一部に痙攣が起きてから徐々に広がることが多いのですが、突然意識を失う、全身のけいれんが起こる、数十秒程度続く大発作が起きる事も少なくありません。
痙攣は出血とは逆に大きい脳動静脈奇形でよく見られ、発作を抑える薬を内服していただきますが、脳動静脈奇形を治療できる薬剤はありません。
脳動静脈奇形のために毛細血管を通らない血液があっても、若い頃は動脈硬化が強くないので、周りの正常血管が脳に血液を送り、脳の働きは正常であるのに対し、加齢に伴って動脈硬化が進行すると、脳が血流不足になりやすく、精神症状、認知機能低下、手足の麻痺、頭痛などを起こすことがあります。
脳動静脈奇形が発見された場合は死亡を免れても、出血で脳が破壊されて後遺症が残ったり、加齢に伴い認知機能低下が出やすかったり、けいれんのコントロールが難しかったりといった問題が残るため、出血や症状の進行を予防するために基本的には何らかの治療を考慮するべきです。

脳動静脈瘤奇形の治療方法

開頭による脳動静脈奇形摘出術

全身麻酔で頭の皮膚を切り、頭蓋骨を開き、手術顕微鏡を使って脳動静脈奇形に到達し、異常血管と正常血管の境界部分を金属製の動脈瘤クリップなどで止血して、脳動静脈奇形を摘出する手術です。
1回の開頭手術で完全な摘出を目指すのが理想ですが、患者さんの安全のために2段階で手術を行うこともあります。 脳動静脈奇形の治療としては最も確実性が高い方法ですが、難しい手術の治療が可能な医師も限られます。

メリット

脳動静脈奇形の治療としては、最も確実性が高い方法です。

デメリット

合併症が起こる可能性があり、脳内出血、脳の腫脹、血管閉塞による脳梗塞、手術中の脳・脳神経の損傷、感染症、痙攣や美容上の問題などがあります。

ガンマナイフ(特殊な放射線治療)

非常に狭い範囲に高い線量の放射線を集中的に当てることで、正常脳組織に及ぼす悪影響を最小限に抑え、病気を小さくする治療法です。

メリット

必要とされる入院期間は短く、患者さんへの負担も開頭手術よりも少ない治療です。 手術で到達することが難しい場所にある、または手術で摘出すれば後遺症が出現することが予想される脳動静脈奇形の治療によく適しています。

デメリット

病変のサイズが直径3cm以下のものでなければ行えません。 ガンマナイフ照射後、直ちに病変が消えてしまう訳ではありません。平均して病変が消失するまでに2~3年かかると考えられています。
また平均消失率は照射後2年で70%、3年で85%です。脳動静脈奇形が消失するのを待っている間は出血リスクは軽くなりますが可能性は残っています。
脳血管撮影で病気が消失した後もごくまれですが、出血の可能性が残っていたという報告もあり、合併症として放射線による脳障害が生じる可能性があります。

脳血管内手術

血管の中を誘導するマイクロガイドワイヤー(外径0.3mm)とマイクロカテーテル(外径0.7mmほどの細い管)、 バルーンカテーテル(血管の内側より血管を広げたりできる風船付きの細い管)や金属コイル(主にプラチナ金属でできたコイル状のもの)で脳内の血管を拡張したり、金属コイルを動脈瘤内に運ぶことで異常な血管の瘻孔・ナイダスを塞栓する治療法です。

このように血管の中からカテーテルなどを使用して病変部(脳動脈瘤や血管狭窄部位や瘻孔やナイダス)に到達し、そこで種々な治療を行う事を脳血管内手術と」言います。