脊椎圧迫骨折

脊椎圧迫骨折とは

体重を支えている脊椎の椎体(ついたい)が圧迫されてくさび形に変形してしまうことを圧迫骨折と言います。高齢の骨粗しょう症、骨形成不全の患者様が圧迫骨折になることが多く、転移性骨腫瘍など癌からの椎骨が弱まることで圧迫骨折になることもあります。

他にも物を持ち上げる、腰をかがめる、階段を踏み外す、尻もちをつく、転倒するなど日常の生活で骨折することもあるため、原因となった動作自体思い出すことが難しく、高齢者だけでなく若者でもスポーツ事故や転落事故での発症することもあります。

脊椎圧迫骨折の症状

継続的な鈍い痛みを伴い、長時間の歩行や座っているとき、寝返りをうった場合でも激しい痛みが走ることがあります。まれに脊椎内の神経が損傷し、その影響で感覚の麻痺や損失という事もあります。神経が損傷した場合は症状として脚に対しての痛みや痺れ、筋力の低下、直腸膀胱症状(失禁)も考えられます。
中には圧迫骨折の患者様でも痛みを全く感じない方もおられるようですが、椎体に対しての負荷がかかっていますので、治療をしない限り骨折している周りの骨に負担がかかり、次々と骨折する可能性もあります。

脊椎圧迫骨折の保存療法

ベッドでの1~2週間安静後、コルセットまたはギブスの装着をしてのリハビリを行います。消炎鎮痛薬や骨粗しょう症の薬を服用します。
手術等と比べて身体への負担が少ないのですが、長期間の入院が必要であり、特に高齢者の長期間の入院で筋力低下が起こる場合もあります。

脊椎圧迫骨折の手術

今まで脊椎圧迫骨折の外科手術と言えば、金属製の器具で固定または骨を移植する固定術が主流とされていましたが、より患者様の身体に負担のない手術法として、椎体形成術とBKP治療法が行われています。

椎体形成術

局所麻酔にて背部より圧迫骨折部分(骨折した椎体)に3mm程の針を刺し、骨セメントを充填し、椎体を安定させます。
手術での創は小さく、手術時間も短い事がメリットですが、骨セメントが目的の椎体以外に充填または漏れて起こる合併症の可能性がごく稀ですがあると言われています。

BKP治療法

椎体を骨折前の形体に復元し、その後に椎体内に骨セメントを注入する手術法で背中から骨折した椎体へ細い針を差し、経路を作り先端に風船(バルーン)のついた器具を入れ、椎体の中に入れた風船を膨らませ、つぶれていた椎体を持ち上げて、骨折前の形体に近づけます。その後に風船を抜くことで椎体内に風船が入っていた空間ができ、そこへ骨セメントを充填します。

・手術の創が非常に小さく身体への負担が小さい
・手術時間も約1時間と短い
・ 疼痛緩和が高い確率で期待できる
・健康保険が適応される手術法

といった様々なメリットがある治療方法ですが、骨折した骨の状態や数によっては手術できない場合があり、術後に合併症が発症する可能性もあります。

脊椎刺激療法(SCS法)

鎮痛剤を服用、他の腰の手術を受けても痛みが慢性的(慢性難治性疼痛)になっている方に効果があるとされます。治療のしくみとしては痛みの信号が神経を経て脊椎に伝わり、脳へと伝達され痛みを感じます。

そこで痛みを伝える脊椎に電気刺激を与えて、脳への痛み信号を伝わりにくくすれば痛みが緩和されるとされます。したがって脊椎刺激療法は痛みの原因を取り除くのではなく、痛みを和らげるための治療法で85%の人に効果があります。
電気刺激の感じ方は個人差がありますが、トントンとマッサージのような感じです。
手術は局所麻酔にて試験的(トライアル)に電気刺激を与えて効果を検討します。
望ましい効果が出ましたら次の手術で刺激装置を植え込みます。
トライアル時にはリードと呼ばれる刺激電極のみを硬膜外腔という脊髄を保護している膜の外側部分に挿入し、その後効果が確認され患者様の使用したい意思があれば、機器一式を植込む本植え込みの手術となります。本植え込み、及びトライアルともに局所麻酔を打ちます。

本植え込みの手術時間は1~2時間程度で入院期間は合わせて1週間程となります。

入院時の流れ

1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目
トライアル
埋め込み
効果を確認 本植え込み 安静 退院

退院後、リードと刺激装置が安定してきたら、体外式神経刺激装置を患者様自身でコントロールすることができます。また、術後は1年に1回外来での受診が必要になります。
装置の寿命は約10年で装置の交換の際は1泊2日入院が必要になります。
慢性難治性疼痛を緩和でき、健康保険が適応される手術方法ですが、疼痛の緩和が目的であるため、疼痛の根治的治療ではありません。

セルゲル法(椎間板修復インプラントゲル治療術)

PLDD法(経皮的レーザー椎間板減圧術)やPODD法(経皮的オゾン椎間板減圧術)と同様に、近年研究・開発されてきた先進治療方法の一つであり、エビデンスがしっかりしている治療法では最も新しい治療法である。
最も特徴的なのは、従来の外科手術やPLDD法やPODD法では根本原因である椎間板の修復や再生は不可能であったが、セルゲル法では椎間板の代わりとなるインプラント化するゲルを直接椎間板に注射することで、それが椎間板の変形したり損傷している部位に入り込み固定化し修復されることである。また、椎間板が修復されることで椎間板自体が自身の再生能力によって元の正常な機能を回復するとされている。

圧迫骨折後に上手く骨が修復されず、椎間板ヘルニアや脊柱菅狭窄症になってしまった場合、痛みやしびれの根本原因は椎間板の変性にあることが多い。椎間板ヘルニアや、脊柱菅狭窄症でもMRI画像上で骨や靭帯の変形による圧迫よりも椎間板の変形による圧迫や炎症が見られる場合には、セルゲル法が第一の選択肢になるだろう。

メリット

・他の治療法では不可能であった「椎間板の修復・再生」が可能なため、根治的治療になりえる
・椎間板ヘルニア、脊柱菅狭窄症、すべり症、椎間関節症、仙腸関節障害など幅広い疾患に対して適用できる
・外科手術後に痛みが取れなかった方や、再発してしまった場合でも治療を受けることができる
・80歳以上の高齢者でも治療を受けることができる
・局所麻酔であること、また細い針だけで治療するため身体への負担が少なく日帰りで治療が可能

デメリット

・椎間板が潰れてほとんどなくなってしまっているような場合は適用とならない
・先進医療かつ自由診療のため治療費が高額である


提供医療機関
日本ではILC国際腰痛クリニック東京で提供されている
https://ilclinic.or.jp/