肺気腫
肺気腫とは
肺の中でガス交換を行う肺実質(肺胞、肺胞嚢、呼吸気管支など)に破壊的な変化をともなった異常な組織の拡大が起こる疾患を肺気腫と言います。肺気腫が生じて変化した組織が元の状態に戻る事はありません。発症率は人口の約1%で男女比でみるとおよそ10:1である。
肺気腫の種類
小葉中心型肺気腫
呼吸細気管支(気管支の末端)とその周辺部(肺小葉)で肺胞が破壊され、腔が拡大して起こる肺気腫を指します。
汎小葉型肺気腫
呼吸細気管支の先端に位置する肺胞道や肺胞嚢が破壊されて起こるびまん性の肺気腫を指します。
巣状型肺気腫
瘢痕(固くなった組織。例として結核病巣)の周囲で起こる肺気腫を指します。
肺気腫の原因
外的要因としては大気汚染や喫煙習慣、寒冷や高湿度があり、内的要因としては年齢や体質などが関係すると考えられている。肺気腫の種類別にみると、小葉中心型肺気腫は白血球が組織の炎症時に出すタンパク質分解酵素の作用によって呼吸細気管支や肺胞壁を破壊される事を言い、汎小葉型肺気腫ではタンパク質分解酵素の作用を抑制するα1-アンチトリプシンという酵素を先天的に持っていない体質が原因とされています。
肺気腫の症状
初期的には自覚症状をともなわずに進行するが、換気障害が起こると、せき、たん、運動による息切れなどがみられるようになります。肺胞の有効面積が減少し、それにともなって肺胞表面の毛細血管網(血管床)も減少するため、肺全体の換気能力が衰えます。加えて組織の破壊によって肺の弾力性が失われるので気道を広げる事が困難になり、気管支が変形しやすくなってしまう。このような状態になった気管支は息を吐き出して肺が収縮した際に、周辺の空気を多く含んだ肺胞に押し潰されるので空気の排出が困難になります。
吸い込んだ空気の排出が困難になると肺内に空気が溜まる事になり、それによって胸郭は圧力をうけて樽状に変形し、横隔膜は押し下げられます。肺気腫の患者は呼気が出にくくなるため、唇をすぼめて息を吐く(口すぼめ呼吸という)傾向があります。
肺気腫の治療
ワクチン接種
インフルエンザワクチンを使用した結果、重篤な増悪も減少。死亡率を50%以下に減少、さらに肺炎球菌ワクチンと併用することで減少すると言われている。
薬物療法
気管支を拡げて呼吸を楽にする気管支拡張薬が主だが、痰をとる去痰薬や感染症を防ぐ抗生物質、ステロイド剤を処方することもある。
運動療法
自覚症状の軽減、運動能力の向上、生活の質の向上など患者さん自身が自立できるように継続的に支援していくためのリハビリ療法のことを言う。
外科手術
内科的療法でも改善されない場合、原因として肺胞が破壊され、弾力性を失って、肺が膨張している事が多く、一部だけが膨張した肺を縮小させるために、極度に破壊された肺の一部(20~30%)を切除する手術が行われます。その手術には、開胸しないで胸腔鏡を用いる方法も使われます。ただし、すべての患者様に効果があるわけではなく、また根本的な治療でもないため、十分に医師や家族とともに検討することが必要です。