高齢者の便秘は危険信号?薬を飲み続ける前に考える治療の選択肢

高齢者に多い慢性便秘症

高齢になると、便秘になることが多いです。

便秘とは症状名でも疾患名でもなく、排便回数や排便量が少ないために糞便が大腸内に滞った状態、直腸内にある糞便を快適に排出できない状態を表すものです。
慢性便秘は、排便回数の減少、かつ排便が困難な状態であることをいいます。高齢者の多くは排便困難症を訴えることが多いです。

排便回数の減少 排便困難症
☑週3回未満しか排便がない ☑お腹に不快感がある
☑排便回数が以前より減ってきた ☑便が出しにくい
☑残便感があり、何回もトイレに行く
☑毎日排便はあるが、硬くて、出にくい

慢性便秘の原因

慢性便秘の原因は様々です。

食事・水分の摂取量の減少

高齢になれば、食事や水分の摂取量が減っていきます。そうなると、便は硬くなり、排便の頻度も減少してしまいます。

筋肉の衰え

加齢で筋肉が衰えると排便がしにくくなることもあります。特に高齢の男性は筋肉の衰えが原因の慢性便秘になりやすいと言われています。

薬剤の作用

薬の作用で、便が出にくくなることもあります。これは薬剤性便秘といいます。
高齢者の場合は、心血管系疾患・消化器疾患・神経疾患なども合併することがあり、これらに対して服用する薬が便秘の原因となり得ます。特に、抗コリン剤、制酸剤、医薬用麻薬、抗うつ剤などは腸管蠕動を抑制するため、便秘につながります。

腸疾患

大腸がんなどの腸疾患も慢性便秘の原因となることがあります。今まで便秘はなかったのにここ1年で便秘になったという50歳すぎの方では大腸がんの可能性も考えられますので、早めに医療機関で検査を受けることはお勧めです。

慢性便秘の治療

高齢者の慢性便秘の対策は、生活習慣・食事改善を基本としながら、薬物療法を組み合わせます。

生活・食事の改善

便の水分保持と容量増加のため、適度な食事量と水分を摂取することが大切です。特に起床時に十分な水分と食事を摂りましょう。
食事の際は、水溶性食物繊維(ワカメ、昆布、納豆、オートミール、置くわ、バナナなど)と不溶性食物繊維(ごぼう、サツマイモ、きのこ類、豆類、野菜全般)をバランスよく取り入れるようにしましょう。納豆やヨーグルト等の発酵食品も取り入れることで腸内環境を整えることができます。
朝食後など、決まった時間に排便を試みるといったトイレ習慣をつけることも大事です。
腸を活性化するため、ウォーキングや腹部マッサージを行いましょう。

腹部マッサージ(のの字運動)

・仰向けに寝て、腹筋を緩めるために膝を立てる
・おへそを中心に、右下腹部(盲腸付近)から右上腹部、左上腹部、左下腹部(S状結腸)へ時計回りに「の」の字を描く

注意点:
・1~2cmほど凹む程度で、痛くならないように、腸を揺らすような感じです。
・便は大腸を時計回りに移動するため、必ず時計回りに行いましょう。
・便が滞りやすいS状結腸がある左の骨盤内側を重点的に押しましょう。
・息を細く吐きながらお腹をへこませる時に圧をかけると効果的です。
・食後30分~1時間以上してから行いましょう。

薬物療法

薬剤を服用する際は、自己判断にせず、必ず医師に相談してからにしましょう。
腸内に水分を集め、便を柔らかくする。酸化マグネシウム(マグネシウム塩類)などの浸透圧性下剤が一般的ですが、腎機能低下時は要注意です。
浸透圧性下剤を新型便秘薬と組み合わせることもあります。
また、坐剤は直腸に直接作用し、速効性があります。
市販の便秘剤は依存性の強いものもありますので、要注意です。便秘剤に依存してしまうと、この薬がないと排便できなくなる悪循環になってしまうケースもあります。

下剤依存を避けたい人が増えている中での治療方針の違い

従来の便秘の治療は主目的が便をとにかく出すという対処療法でした。そのため、刺激性下剤を常用して、便秘に注意する程度でした。

しかし、刺激性下剤は依存性や効果の減弱リスクがあり、近年は治療方針が変わってきています。刺激性下剤の常用を避けて、食事生活の改善や運動の取り入れなどして、自然な排便リズムの再獲得を目指します。また、従来なかった薬剤への恐怖や依存への不安などに対しても認知行動療法を用いながら、「薬を飲まないと便が出ない」という思い込みを修正することもあります。

セカンドオピニオンで得られる“違う角度のアドバイス”

治療方針でお悩みの場合は、複数の医師による診断(セカンドオピニオン)を受けることもおすすめです。

セカンドオピニオンとは英語の「Second Opinion」で、「第二の意見」と意味をしています。ある病気や症状に対して、多くの医師から意見を聞き、最適な対策を選んでいくのです。 現在診療を受けている医師とは別の医療機関の医師に相談して、治療方針を比較して最善の治療法を選択できます。