腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤とは

腹部大動脈瘤とは腹部大動脈の壁が膨らんでできたこぶ(瘤)のことです。
大動脈は心臓から体の各器官に酸素で満たされた血液を運ぶ体内で最も太い血管であり、胸部から腹部へと伸びて、腹部で腸骨動脈に分岐し、脚に向かって血液を運びます。
動脈瘤は身体のどの部分の動脈にも発生する可能性がありますが、腹部大動脈と腸骨動脈に比較的多くでき、それぞれを腹部大動脈瘤、腸骨動脈瘤と呼びます。

腹部大動脈瘤の原因

腹部大動脈瘤は多く動脈硬化症が原因です。喫煙、糖尿病、高血圧などの生活習慣病が動脈硬化症を悪化させると言われており、それらに罹患している患者様は年々増加傾向にあり、それに伴い、腹部大動脈瘤の罹患率も増加する傾向にあります。
その他には先天性動脈壁形成不全や動脈炎、遺伝的因子、梅毒などの感染症、怪我なども腹部大動脈瘤の原因となると考えられています。

腹部大動脈瘤の症状

動脈瘤には自覚症状が無いことから、人間ドックなどの健診や他の病気の検査でたまたま見つかるケースがほとんどです。 腹部大動脈の太さは20mm前後ですが、こぶとなって膨れることにより動脈の壁が薄く弱くなり、周りの臓器を圧迫するようになると、腰痛や腹痛、圧迫感などの症状が現れてきます。
動脈瘤は通常の3倍程度以上に拡大すると破裂の危険があると言われています。 破裂してしまった場合、痛みや出血性のショックが引き起こされ、高い確率で生命が奪われてしまいます。そのため、瘤が破裂する前に外科手術を行う必要があります。

腹部大動脈瘤の治療方法

腹部大動脈瘤の大きさや形態によっては治療方法が異なるため、医師との相談が重要となります。 発見された時点で動脈瘤が小さい場合には医師は動脈瘤を観察するための定期的な検診を行います。
しかし、既に直径30mm前後以上の大きな動脈瘤や定期的な検査で急速に拡大していることが分かった場合など、破裂のリスクが高い動脈瘤は早急な治療、または手術が必要となります。動脈瘤は薬では良くなりません。

治療法には次の2つの選択肢があります。

外科手術(人工血管置換術)

全身麻酔下で腹部、または側腹部を切開して大動脈瘤を人工血管と置き換え、縫合糸で縫合します。安全性が確立されている確実な治療法であり、手術で命に関わる危険性は1%以下と言われています。

しかし、ご年配の方や以前に心筋梗塞、脳梗塞、肺気腫などのご病気になられた方や腹部の手術を受けられたことのある方では危険性が高いため、治療が受けられない可能性があります。

ステントグラフト内挿術

腹部大動脈瘤の治療としては比較的新しく腹部を大きく切開することなく治療することができるため、ご高齢の方や他に病気のある方でも安全に行うことができる身体への負担が少ない治療法になります。
この方法は両側の脚の付け根から動脈にカテーテルを挿入し、動脈瘤の内側にステントグラフトを配置し、新しいバイパスを確保します。その結果動脈瘤を血流から遮断することができます。