甲状腺がん

甲状腺がんとは

甲状腺はいわゆるのどぼとけの下にある右葉と左葉からなる小さな臓器です。成長の促進や全身の新陳代謝に関わるホルモンを分泌する役割を果たしています。

甲状腺の病気は腫瘍ができるもの(腫瘍症)と、そうでないもの(バセドウ病などの非腫瘍症)があります。腫瘍の多くは良性のものですが、中には悪性腫瘍もあります。この悪性腫瘍は甲状腺がんと呼びます。

甲状腺がんは圧倒的に女性に多いです。20代の若年者から高齢者まで幅広い年齢で発症が見られます。他のがんに比べると、進行が遅く、治りやすいがんとされています。

甲状腺がんの種類

甲状腺がんは組織型により、乳頭がん、濾胞がん、低分化がん、髄様がん、未分化がんに分類されます。これらは病態や悪性度が大きく異なります。

最も多いのは乳頭がんで甲状腺がんの約9割を占めます。しかしながら、進行は遅いです。比較的早い時期から甲状腺周囲のリンパ節に転移することが多いですが、リンパ節郭清術をすれば、予後は良好とされています。一部の乳頭がんでは悪性度の高い未分化がんに代わることがあり、高齢で発症するほど悪性度が高くなると考えられています。

次に多いのは濾胞がんです。これも進行が遅いがんですが、肺や骨などに転移しやすいものです。治療後の経過は比較的良好ですが、血行性転移があった場合の予後はあまり良くないとされています。

乳頭がんと濾胞がんは分化がんと総称されます。
乳頭がんや濾胞がんの中で、低分化成分が含まれるものは低分化がんと呼ばれています。分化がんと比べると、進行がやや速く、予後もやや不良です。

髄様がんは発症率が極めて低く、特殊ながんとされます。カルシウムを調節するカルシトニンと呼ばれるホルモンを分泌する傍濾胞細胞ががん化したものであり、リンパ節や骨、肝臓に転移しやすい性質があります。進行は分化がんより速いがんです。

未分化がんは比較的男性にも多く発症し、高齢者に多いと言われています。進行が速く、気管や食道などの臓器への浸潤や肺や骨などの臓器への転移を起こしやすいがんです。

甲状腺がんの原因

甲状腺がんの原因はまだはっきりと分からないところがありますが、大きく以下の3つが考えられています。

1つは放射線の被曝です。レントゲンや放射線治療を行った場合も甲状腺がんが発症されることがあると言われています。特に小児に発生しやすいとされています。

他の原因としては、遺伝が挙げられています。特に髄様がんの場合は遺伝性があるとされています。この場合はがんの腫瘍が1個ではなく複数多発することが多いようで、特に要注意です。

もう1つの原因はヨードの摂取不足とされています。

甲状腺がんの症状

甲状腺がんの初期症状は少なく、健康診断などで偶然発見されることが多いです。
主な症状はのどぼとけ付近のしこりです。大きくなると周囲の臓器への圧迫症状が現れます。声のかすれも生じることがあります。
未分化がんの場合はのどの痛み、息苦しさ、嚥下障害などが現れます。

甲状腺がんの検査

甲状腺の腫瘍はしこりがあるだけです。そのため、腫瘍が良性のものなのか、がんであるのかを判断するには超音波検査、穿刺吸引細胞診、血液検査などが行われます。がんの広がりを調べるにはCT検査やシンチグラフィー検査などを行います。

甲状腺がんの治療

がんの種類や病期によって、それに適した治療法が選択されます。

外科手術

最も基本的な療法です。手術には甲状腺の一部を取り除く葉切除術、甲状腺の2/3以上を取り除く亜全摘術、甲状腺の全てを取り除く全摘術があります。また、周囲の臓器への転移がある場合は頸部リンパ節・食道・喉頭なども同時に切除されます。

放射線療法(放射性ヨウ素内用療法)

甲状腺がんの放射線療法は放射性ヨウ素内用療法が中心です。乳頭がんや濾胞がんの全摘術後に甲状腺がんの再発や転移を予防するために行われます。放射性ヨウ素カプセルを内服する療法で入院か外来で行われます。副作用としては、吐き気、味覚の変化、唾液の減少がありますが、自然に回復していくと言われています。

化学療法

シスプラチン・エトポシドなどの抗がん剤を使用して、がん細胞の増殖を抑え、がん細胞を破壊する療法です。放射線療法と組み合わせて行われることがあります。

甲状腺刺激ホルモン抑制療法

術後に行われる療法です。甲状腺ホルモン薬を多めに服用することで、がん細胞に働きかけるとされている甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量を低下させ、がんの再発を予防します。

間違えられやすい他の病気

甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、バセドウ病、橋本症