くも膜下出血

くも膜下出血とは

脳は硬膜、くも膜、軟膜という3層からなる髄膜に覆われています。一番内側にある軟膜とくも膜の間はくも膜下腔という空間があり、そこは脳の内部へ栄養を送る血管があります。
くも膜下腔にはり巡らされた血管が切れて、その空間に流れている脳脊髄液に血液が混ざる状態はくも膜下出血と呼ばれます。
年代別では40~50歳代がピークだと言われています。性別では女性に多い傾向があります。日本では年間1万人の人口に対して2人程度の頻度で発症が見られます。

くも膜下出血の原因

くも膜下出血の原因はくも膜下にはり巡らされた脳の血管の一部が切れることです。大きくは外傷性と非外傷性に分けられています。
外傷性くも膜下出血は交通事故、転倒、高いところからの落下などによって、頭部を損傷した際に起こります。
また、びまん性軸策損傷によって、少量のくも膜下出血が起こる場合もあります。
非外傷性くも膜下出血は突然出血を起こすものです。その9割は脳動脈瘤の破裂が原因で発症します。
脳動脈瘤とは動脈の一部がこぶのように膨張したものです。この脳動脈瘤が大きくなると、眠っている間や日常生活の中で突然破裂を起こすことがあり、興奮したり激しい運動をした場合に発症することもあります。
その他には脳の主要な血管の異常でくも膜下出となる場合もあります。例としては脳動静脈奇形や脳腫瘍からの出血が挙げられます。
また、いろいろと検査をしても原因が突き止められないくも膜下出血もあります。
くも膜下出血の最大リスク要因は高血圧と喫煙習慣、飲酒だと言われています。
その他はストレス、家族の病歴、輸血歴なども発症リスクを高めるとされています。

くも膜下出血の症状

脳動脈瘤の破裂や頭部損傷と同時に突然の激しい頭痛が起こり、その痛みが継続するのが特徴です。
嘔吐感や後頸部の凝りなどの症状(髄膜刺激症状)も見られ、破裂した動脈瘤の場所または損傷状態によっては片麻痺が起こることもあります。
重症の場合には呼吸困難や不整脈を伴うこともあります。
脳内の圧力が上昇して血流を阻害するため、意識を失うことも多いと言われており、病状が進行していくと意識が戻らない場合もあります。
くも膜下出血は脳内出血を伴うこともあり、手足の麻痺や言語障害も見られます。

くも膜下出血の前兆

くも膜下出血の前兆は軽い頭痛と動眼神経麻痺があり、 少量の出血が起こっている場合は軽い頭痛が発生します。
これは警告出血とも言われます。
しかし、軽い頭痛はくも膜下出血と疑われることが少なく、この軽症の状態で治療できれば、後遺症が残る可能性が少ないと言われています。
ただし、普段と異なる頭痛の症状がある場合は医師と相談しましょう。

また目の後ろに走る内頸動脈に動脈瘤ができている場合は動脈神経が圧迫されて、まぶたが下がったりものが2つに見えてしまったりする動眼神経麻痺が現れます。
眼科に行かれる患者様が少なくありませんが、くも膜下出血の恐れもありますので、頭部CT検査等も受けることをお勧めします。 以上のような前兆は必ずしもあるとは限りませんが、もし現れたらそれを見逃さないことが重要です。

くも膜下出血の診断

くも膜下出血の特徴的な症状が現れた場合には、直ちに頭部CT検査で頭蓋骨内の出血の有無を調べましょう。出血が確認されたら、脳血管撮影を行って破裂した動脈瘤の部位を特定します。

くも膜下出血の予防

くも膜下出血を予防するためには、日常生活で以下のことに気をつけることが大事です。

血圧をコントロールする

血圧の激しい変化があったら、すぐに医師に診てもらいましょう。

食事に気をつける

塩分を取り過ぎないようにしましょう。野菜に含まれるカリウムが塩分の排出を促しますので、野菜を多めに採りましょう。さらに、アルコールを控えめにすることも大切です。

禁煙を心がける

喫煙そのものがくも膜下出血のリスクを高めるとされているため、たばこの本数を減らすのではなく、思い切って禁煙に取り組みましょう。


また、くも膜下出血の原因である脳動脈瘤や血管異常を早期に発見するために、脳ドックを定期的に受けることはお勧めです。

くも膜下出血の治療

外傷性くも膜下出血の場合は損傷を回復させる効果的な治療法が無いため、主としては、再出血や脳血管攣縮などの合併症を抑えたり、脳内の血圧を整えたりする治療をします。
脳動脈瘤の破裂が原因である非外傷性くも膜下出血の場合は再破裂の危険性が高いので、手術による治療が行われます。治療の方法は脳動脈瘤の位置、形状、大きさ、合併症の有無などによって選択されますが、過度の重症の場合は手術が不可能なこともあります。

①クリッピング術

開頭手術で出血を除去しながら金属製(通常はチタン製)のクリップを用いて、破裂した脳動脈瘤を閉鎖する方法です。開頭手術では脳内の圧力を正常に保つための管を設置することもあります。

②コイル塞栓術

最近行われるようになった血管内手術です。血管内にカテーテルを挿入して破裂した動脈瘤の内側にコイルを設置することで血管を補強する治療法です。

間違えられやすい他の病気

脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、髄膜炎